着物普段着、女性

着物=堅苦しいというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

実際に、古くから和装には、着物から帯、小物にいたるまで「格」があり、礼装や準礼装、外出着、普段着など、TPOをわきまえて着物を選ぶことが必要とされてきました。

また残念なことに、最近では、着物の間違った着用方法を執拗に指摘する方も増えているようで、“着物警察” という言葉がTwitterでバズるなど、堅苦しさが若い世代の着物離れを加速させる要因となってしまっています。

若い世代の方が普段着として着物を楽しむのであれば、着物の格や種類、素材などを気にせず好きなもの着るのが一番です。

ですが、「どうせなら伝統的な着用方法にこだわりたい!」「着物警察に捕まりたくない!」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、どんな着物を着るべきなのかお悩みの方へ、着物の格や種類についてシーン別でご紹介していきます。ぜひ「着物デビューしたい!」という方は参考にしてみてくださいね♪

女性の着物の “格”

女性の着物の格

上で少し触れましたが、着物には「格」という概念があります。着物を着用するときには、ドレスなど洋装同様、参加する場所、季節、立場などによって、着用する着物の格を使い分ける必要がありました。

基本的に、着物の格とそれぞれの格に対応する着物の種類は以下の通りです。わかりやすい様に格の高いものから並べています(上の行にいくほど格が高い着物)。

礼装着(第一礼装) 打掛、黒留袖、本振袖、喪服など
略礼装着(準礼装着) 色留袖、訪問着、付け下げ、振袖、色無地、江戸小紋の紋付など
外出着 付け下げ小紋、小紋(友禅)、小紋、紬の訪問着、無地の紬、絞り、お召、更紗など
街着・普段着 紬、絣、黄八丈、ウール、銘仙、木綿、浴衣

このように着物の格は4段階に分かれ、シーンに応じて該当する格の着物を着用するのが伝統的な着用方法です。

それでは次に、シーン別でどんな着物を着るべきかをご紹介していきます。

※下記で紹介する内容は、あくまでもひとつの目安で、地域や宗教、慣例、個人の考え方によって解釈は異なります。

こんなときはどんな着物を選べば良い?シーンに応じた着物の格を解説!

着物_疑問

ドレスやワンピースなどみなさんも馴染みの深い洋服がシーンを選ぶように、着物にも、

  • 結婚式やお葬式などフォーマルな場面で着る着物
  • パーティーやお茶会などセミフォーマルな場面で着る着物
  • 友人との食事やお稽古、観劇などカジュアルな場面で着る着物

といったようにシーンによって着用する着物の種類が変わってきます。

着物に馴染みのない若い方は特に、イメージがあまり付かないと思います。ゆっくりで良いので、ぜひ洋服と照らし合わせて覚えてみてくださいね。

フォーマルな場面で着る着物

まずはじめに、特別な時(ハレまたはケ)や公的な儀式などフォーマルな場面で着用される着物。

洋服で言うところのドレスや礼服にあたるものですが、着物の場合、着用する女性が、既婚 or 未婚で着用する着物が異なってきますので、その点は注意が必要です。

着用シーン例
  • 親族の結婚式・披露宴
  • 花嫁衣装
  • 成人式
  • お通夜・お葬式
  • 正式なレセプションなど
打掛 室町時代からある女性の第一礼装です。現在では、主に、花嫁が式服として着用するのが一般的で、ご存知の方も多い「白無垢」は打掛の一種で、白打掛とも呼ばれています。
黒留袖 黒留袖は、地色が黒の留袖のことで、背中心・両外袖・両胸に家紋を染め抜いた、染め抜き五つ紋があり、裾には華やかな模様をあしらわれています。結婚式や披露宴で、親族の方などが着用する慶事用のフォーマル着です。
本振袖(大振袖) 本振袖は、未婚女性が着用する第一礼装です。今日では婚礼衣装として着用され、花嫁衣裳をはじめ成人式や披露宴といった場面で着用されています。
喪服(黒紋付) 元来、喪中に哀悼の意を表すために着られていましたが、今日では葬儀・告別式のときに着用される礼装用の着物です。宗教や地域の慣例によっても異なりますが一般的には、五つ紋付の黒無地が喪の場面で着用されます。

フォーマルな場面でも着ることのできる着物(セミフォーマル)

セミフォーマルな場面では、準礼装(略礼装と同義)の格に位置する着物が着用されます。

厳粛な場で着用される第一礼装と比べると、柄行や色のバリエーションがぐっと増え、個性を出した着物の楽しみ方ができます。

着用シーン例
  • 入学式・卒業式
  • 結婚式・披露宴(親族の中でも関係の遠い方、友人)
  • 初釜
  • 華やかなパーティーなど
色留袖 地色が黒の留袖である黒留袖に対し、黒以外の色が地色の留袖は色留袖と呼ばれます。基本的に慶事用のフォーマル着で、婚礼の席においては、黒留袖よりやや軽い印象になるので、親族のなかでもやや関係の遠い方が着用します。
訪問着 お正月の晴着や、新春のお茶会、華やかなパーティなどで着用されています。肩、胸、袖、裾などに自由に模様が付けられ、古典文様や現代的な抽象画風まで種類も幅広く、婚礼や正式なお茶会などでは一つ紋付のものが相応しいとされています。
振袖 未婚女性の礼装で、華麗な絵羽模様と長い袖が特徴の着物です。
中振袖(二尺五寸〜六寸)→ 結婚式やパーティー
小振袖(二尺〜二尺三寸)→ お茶会や気軽なパーティー
のように袖の長さで着用シーンが変わってきます。
付け下げ 格としては、訪問着と小紋の中間の着物で、訪問着では目立ちすぎるけど、小紋では物足りない、という場面で着用されます。具体的なシーンとしては、友人の結婚式や披露宴、入学式・卒業式、観劇などに着用されるのが一般的です。
色無地 単色で柄や模様がない無地の着物のため、合わせやすいのが特徴です。紋入りの色無地は略礼装になり、入学式・卒業式等の晴れの席やお茶会で着用されるのが一般的です。
江戸小紋の紋付 小紋という小さな柄が全体にあしらわれた着物です。紋付きのものや格式の高い柄の江戸小紋は、色無地や訪問着と同格の準礼装として、入学式や卒業式、お宮参りなど色無地と同じ様に着用することができます。

カジュアルな場面で着る着物(外出着・しゃれ着)

やや格の高い着物として着る着物から、趣味として楽しめる着物まで最も自由度の高いグループで、TPOに合わせて柄行や合わせる小物をチョイスして微調整を楽しめるかと思います。

礼装ほど堅くなくて良いけど、普段着よりはキチッと着たいという場面の着物です。

着用シーン例
  • 茶道や日本舞踊などのお稽古
  • 観劇
  • カジュアルなパーティー
  • お茶会
付け下げ小紋 小紋柄を染め上げた付下げで、付下げや訪問着より少し下の格になりますが、小紋よりもおしゃれ着として着用されます。
小紋友禅 手描き染、型染め問わず、友禅染めで模様を描いた小紋は小紋友禅と呼ばれます。色彩的で華やかな魅力がある小紋友禅は少しお洒落をして外出したい、そんなときにぴったりの着物です。
小紋 全体に細かい模様が繰り返し入っている着物です。基本的にお出かけ着として着用される着物ですが、柄の種類も豊富で、格式高い古典柄の小紋は、軽いお茶会やパーティーなどでも着ることができます。
紬の訪問着 紬の訪問着はパーティーや結婚式の2次会、ホテルでのお食事会、観劇などで着用することができます。洋服で言うスーツやワンピースで、訪問着だと少し華美になりすぎてしまうシーンにおすすめです。
無地の紬 無地の紬は、絣柄や縞を織り出した紬と比べて改まった場所でも着用できるのが特徴です。一つ紋入り色無地の紬に限り、正式なお茶会やパーティーでも着用されます。
絞り 纐纈技法を使って染められ、派手さがなく素朴な印象を持つ着物です。観劇や軽いお茶会などで着用されます。
お召 織の着物としては最高級品です。無地の紋織は略礼装として着用されることもありますが、大きく柄が入ったお召はカジュアル用として着用されます。
更紗 木綿の生地に草や樹木、草花や動物文、人物文、ペイズリー、幾何学模様のモチーフがはっきりとした色彩で描かれています。帯で格上げすることでフォーマルパーティーなどでも着用することができます。

ちょっとした外出で着る普段着の着物(街着・浴衣)

お出かけまではいかない、ちょっとした外出に着る着物が、街着・普段着・浴衣です。普段何もない日にみなさんがきている洋服がこのグループに値します。

素材は正絹(シルク100%)のものから木綿、ウールまで幅広く、柄行によっては、格が低いのですが、質素な印象は感じない着物もあります。

着用シーン例
  • お稽古
  • 趣味の集まり
  • 友人との食事
  • 花火大会・夏祭り
先に糸を染めてから反物にし、その後仕立てる「先染めの着物」と呼ばれるのが紬です。百貨店へのお買い物、友人とのランチ、コンサートなど、ちょっとした外出のときに着用します。儀式や式典などフォーマルな場面では着用できません。
絣は織りの着物に柄を出すために使う技法で、絣糸や絣糸で出す柄のことを指して絣と呼ぶこともあります。お稽古や趣味の集いなど気負わないお出かけの場面で着用されます。高価なものでもフォーマルな場面での着用はNGなのが一般的です。
黄八丈 民芸調の普段着着物で、黒黄八丈は洗練された印象で最近人気を集めています。同窓会や観劇などで着用することができます。
ウール・木綿 ウールや木綿の着物は普段着着物の代表格です。
浴衣 もっともカジュアルな着物のひとつで、夏の装いとしても知られています。夏祭りや花火大会、家での寛ぎの時間などで着用します。

 

着物は好きなように着るのが一番!けど最低限のマナーは覚えた方が得かも…

着物女性

今回は、着物の種類と格について、着用シーン別に解説しました。ここまでの説明でやはり多くの方が着物は堅苦しいものだという印象を持ったのではないでしょうか?

すべてを覚えるのは時間もかかり難しいので、フォーマルなシーンにおいて着てはいけない着物を把握しておけば、恥をかくといくことはないでしょう。

近年、着物業界全体も若い人に着物を楽しんでもらうために、好きな着物を好きな様に着て欲しいという認識が強くなっています。

最初のうちはハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、少しでも興味のある方は、あまり遠巻きに考えずぜひ一度お近くの呉服店や、百貨店の着物コーナーに立ち寄ってみてくださいね♪

また、今回ご紹介した着用シーン別の着物の種類早見表を、京染卸商業組合が運営する「KYOZOME.info」さんが公開していますので、分かりづらかったという方はぜひこちらも参考にしてみてください。

京染卸商業組合 KYOZOME.info:着物TPO