着物は普通の洋服と素材も形も異なり、「しまい方や畳み方がわからない」という方も多いでしょう。
「マンション暮らしで、タンスがないからどこに保管すれば良い?」「着物が傷まないようにしまいたい」などと考える方もいるようです。
本記事では、しわにならない着物の畳み方をはじめ、長持ちさせるしまい方や手入れのコツを解説します。
不要になってしまった着物について、おすすめの手放す方法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
そもそも着物のしまい方に気を付ける必要はある?
着物を長く着たい、または大切な着物だからきれいに保ちたい場合、着物の保管に気を配る必要があります。
着物は、大量生産のポリエステル製などを除き、繊細な素材である正絹から作られていることが多いです。
正絹は元々カビが好む素材で、さらに着物に使われる地糊や付着してしまった化粧品・食べこぼし、高温多湿などの要因からもカビが発生しやすいです。
そのため、着物を手入れせずにしまったり、環境を整えずに保管しておくとカビてしまうおそれがあります。
また、綿や麻の着物はしわが付きやすく、上手に畳まないと強くしわが付いてしまうこともあります。
繊細な着物は、適切な保管方法を知っておかないと状態を損ねてしまうので、取り扱いに十分注意しましょう。
着物をしまう前のお手入れ
着物を着用した後にしまう際、どのような点に気を付けるべきでしょう。
以下では、着物を保管する前に行うべき具体的なお手入れ方法について詳しくご紹介します。
着物のホコリを取り除く
着物に付着したホコリやゴミを放置することは、繊維を傷める原因となります。
柔らかい専用のブラシを使って、優しく表面のホコリを払いましょう。
払う際には着物の繊維にダメージを与えないよう、力を入れすぎないことがポイントです。
風通しの良い場所で陰干しする
着物は湿度が高い場所で保管すると、カビが発生しやすくなります。
着物をしまう前やしまった後も、定期的に風通しの良い日陰で数時間陰干しをしましょう。
特に梅雨の時期や湿度が高い季節には、陰干しを怠らないようにすることで、着物の湿気を取り除くことができます。
着物クリーニングを活用する
着物の汚れがひどい場合や長期間着用した後は、専門のクリーニングの活用を検討しましょう。
一般的なクリーニングではなく、着物専門のクリーニングを行っている店を選ぶことで、繊細な素材の着物も安心して任せられます。
しわにならない着物の畳み方【基本の本だたみ】
出典:「美しいキモノ」Youtube
着物を長く美しく保つためには、正しい畳み方をすることが重要です。
ここでは、着物がしわにならず、保管にも最適な「基本の本だたみ」の方法をご紹介します。
本だたみは女物から男物、単衣、袷の長着など幅広いきものを畳む際に適していますので、押さえておくと便利です。
また、着物を保護できるたとう紙の役割・使い方も併せてご説明します。
- まず着物を広げる
着物を畳む前に、清潔で平らなスペースを確保し、着物を広げます。
自分から見て左手に衿、右手に裾が来るように置きます。
また、広げる際は、しわをきれいに伸ばしながら整えましょう。
- 前身頃を折る
次に、着物の手前(右側)の前身頃を脇縫いから内側に折り畳み、おくみつけの部分から折り返します。
さらに、その上に奥(左側)の前身頃を重ねます。
裾が揃うように丁寧に重ね、着物が真っ直ぐになるように整えましょう。
- 身頃を折り畳む
前身頃を折り畳んだ後、着物の中央部分(胴の部分)を中心で半分にして、手前に折り畳みます。
左袖・右袖の順に、袖付け線から折って、後ろ身頃の上に重ねます。
- 縦に半分に折る
着物の全体が縦に長い形状になったら、上下に折ります。
この時、端になる部分が重なり、きれいな四角形になるように畳みます。
- たとう紙を使って保管
畳んだ着物を保護するために、たとう紙を使用します。
たとう紙は、着物を湿気やホコリから守るための和紙製のカバーで、長期保管にも最適です。
たとう紙に包むことで、着物を呼吸させながらも適切な湿度で保管できるため、カビや色あせを防ぎます。
畳んだ着物をたとう紙に包んだら、風通しの良い場所で保管し、湿気の多い時期には防湿剤も一緒に入れると安心です。
着物は正しい畳み方をし、たとう紙でしっかり保管することで、美しく長持ちさせることができます。
タンス収納時のポイント
着物を長期間美しく保つためには、タンスに正しく収納することが大切です。
以下では、収納時に気を付けたいポイントをご紹介します。
桐たんすを使う
桐たんすは、着物の保管に最適な伝統的な収納家具です。
桐には高い吸湿性があり、湿気が多い日本の気候でも内部の湿度を適切に調整してくれます。
湿度が低いときには水分を放出し、湿度が高いときには水分を吸収するため、湿気やカビに弱い素材の着物でも安心して保管できます。
また、桐は防虫効果も持っているため、着物を虫食いから守る役割も果たします。
除湿剤・防虫剤を活用する
着物をタンスに収納する際、除湿剤や防虫剤を一緒に入れるとさらに安心です。
除湿剤は湿気がこもりやすい時期に湿度を調整してくれるため、カビの発生を防ぎます。
防虫剤は着物を虫食いから守り、着物の繊維を長持ちさせます。
ただし、防虫剤の種類や位置には注意が必要です。
着物に直接触れないようにし、かつ種類を混ぜると効果が薄れる場合があるため、使う際は1種類に統一するのがおすすめです。
ぎゅうぎゅうに詰めない
着物をタンスに収納する際には、ぎゅうぎゅうに詰め込まないようにしましょう。
詰めすぎると、しわがつきやすくなったり、生地にダメージが加わる原因になります。
適度な隙間を空け、着物が呼吸できるようにすることで通気性も保たれるうえに、着物同士が擦れ合って傷むのも防げるため、見た目を損なわず長く愛用できます。
マンションでタンスがない場合
マンション住まいなどで桐たんすがない場合も、工夫次第で着物を上手に保管できます。
まず、着物をきれいに畳んでたとう紙に包み、通気性のある収納袋に入れることで湿気を防ぎます。
次に、クローゼットや押入れに除湿剤や防虫剤を一緒に置き、空気の流れを確保します。
また、収納場所があまり広くない場合でも、なるべく重ねすぎず、着物にスペースを持たせてあげることが大切です。
もしクローゼットの湿気が気になる場合は、除湿器を設置するのも一つの方法です。
定期的な虫干しで湿気を払おう
着物を長期間美しく保つためには、定期的な虫干しを行うことをおすすめします。
虫干しは、着物を風通しの良い場所で乾燥させるお手入れ方法で、行うことで湿気やカビ、虫食いを防ぐことができます。
虫干しの適切なタイミングと方法をわかりやすく解説します。
虫干しのタイミング
着物の虫干しは、年に1〜2回行うのが理想です。
特に湿気が多くなる梅雨が明けた後や、乾燥した秋の晴れた日が最適な時期とされています。
この時期に湿気をしっかり取り除くことで、着物の生地がダメージを受けるのを防ぎ、長くきれいに保つことができます。
具体的な虫干し時期としては、以下のとおりです。
夏の虫干し(7~8月):梅雨が明け、湿気が少なくなった晴れた日を選んで行います。
秋の虫干し(10~11月):秋晴れの乾燥した日に行うと、夏に溜まった湿気をしっかりと取り除けます。
虫干しを行う際には、湿度が低い日を選ぶことが大切で、晴れた日が2〜3日続くタイミングが理想です。
虫干しの方法
正しい着物の虫干しの方法を、順序を追って以下に解説します。
- 風通しの良い場所を選ぶ
着物の虫干しは、直射日光が当たらず、風通しの良い場所で行います。
直射日光は着物の色あせの原因になり、日陰や室内などの場所での虫干しが適しています。
さらに、風通しの良い場所で干すことで着物の湿気を効率的に逃すことができます。
- 着物を広げて干す
着物をたとう紙から出し、ハンガーにかけて形を整えながら干します。
着物専用のハンガーがある場合は、使用することで肩や袖部分にしわが付きづらく、より便利に干せます。
着物をハンガーにかけられない場合は、平らな場所に広げても良いですが、その場合もしわにならないように注意が必要です。
- 虫干しの時間
着物を干す時間は、半日程度が目安です。
あまり長時間干しすぎると、逆に生地にダメージを与える可能性があるため、乾燥させすぎないように注意しましょう。
- 終わったらたとう紙に包んで保管
虫干しが終わったら、着物の状態を確認してしわが付かないように丁寧に畳み、たとう紙に包んで保管します。
たとう紙は湿気を吸収し、着物を保護するため、虫干し後に必ず新しいものに交換するのが理想です。
不要な着物は買取で現金化もおすすめ
着物は正しい畳み方をし、定期的に正しい手入れを行うことで、長持ちさせることができます。しかし、これらを怠ると、変色やしわなどが付き、状態が悪化していきます。
着物の保存状態は、その着物の価値に大きく影響します。
そのため、万が一「ずっとしまいっぱなしの着物を売りたい」となったときに、着物の状態が悪いと買い取ってもらえない恐れがあります。
本来価値があって現金化できたかもしれない着物を捨てることになってしまうのは悲しいですよね。
着なくなった着物は、今以上に状態が悪くならないうちに、なるべく早く買取査定に出すことをおすすめします。
お持ちの着物が中古市場で価値の高い着物であった場合、きれいな状態のほうがより高く買い取ってもらえます。
以下の記事では、おすすめの着物買取業者を紹介しております。「着物を買取に出したことがないから何をどうすれば良いの?」「どの買取業者を選べばいいかわからない」などという方はぜひご覧ください。
まとめ
着物を長く美しく保つためには、正しい畳み方や保管方法を知ることが重要です。
適切な手入れを行い、湿度やカビに気をつけた保管を心掛けることで、着物の状態を良好に保つことができます。
また、不要になった着物は早めに買取査定に出すことで、価値を損なう前に賢く現金化することができます。
着物はデリケートな素材でできているものが多いので、丁寧な管理を徹底し、時には買取という判断を行うことで、大切な着物を次の世代にも伝えていけるでしょう。